プロダクトマネジメントのバイブル的な本の「INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 第2版」を読んでみた
プロダクトマネージャーのバイブル的な本として有名な「INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント(第2版)」の記事を読んでみました。 プロダクトマネージャーはもちろんのこと、プロダクト開発に関わるエンジニア、デザイナー、マーケターなどにも役立つ情報がつまっています。
INSPIRED とはどのような本か?
INSPIREDはプロジェクトマネージャーのバイブル的な本と言われています。
内容としては、IT企業のプロダクトマネージャーの教科書的な本であり、プロダクトマネージャーを取り巻く組織、製品、プロセス、文化と幅広く学べます。
その中でも本書の主要メッセージとしては、プロダクトマネージャーは何を作るかを発見する「製品発見」を主導し、良いと判断されたアイデアをプロダクトバックログにのせる権限と説明責任を持つということです。
そのために、
- なぜ製品発見が必要なのか?
- 継続的な製品発見と市場投入を行うためのチーム構成や役割は何か?
- プロダクトを成功に導くためのプロダクトビジョン、戦略、目標は?
- 製品発見をするための具体的なテクニックはどういうものがあるか?
といった、製品発見を中心としたプロダクトマネジメントについて理解を深めていくことができます。
なぜ製品発見が必要なのか?
重要な4つのリスク
新規プロダクトや新機能のアイデアにはさまざまなリスクがあり、多くのアイデアはうまくいきません。そのため、作り始めるまえに製品発見をすることで、アイデアに対する重要なリスクに対応していく必要があります。
重要なリスクとしては以下の4つがあり、製品発見の目的は製品をつくる前にこれらのリスクに対処することです。
- 価値のリスク:顧客はこれを買ったり、これを使うことを選んでくれるだろうか?
- ユーザビリティのリスク:ユーザーはこれの使い方がわかるだろうか?
- 実現可能性のリスク:私達はこれを作れるだろうか?
- 事業実現性のリスク:このソリューションは私達のビジネスに貢献するだろうか?マーケティング、財務、法務などの分野でも問題ないか?
継続的な製品発見と市場投入
優れたプロダクトの背後には、継続的な製品発見と市場投入があります。
プロダクト開発の大まかな2つのプロセスとして、
- 製品発見プロセス:作るべき製品を発見する
- 市場投入プロセス:製品をつくりあげて市場にリリースする
があります。
これを、目標に向けて継続的にプロダクト開発チームで実行していきます。
製品発見プロセスでは、プロダクトマネージャーを中心としてつくる必要のある製品を発見します。そして、製品発見の結果として、良いアイデアと判別されたらプロダクトバックログにのせます。
製品の市場投入は、デザイナーやエンジニアを中心に高品質な製品を市場に投入していきます。
プロダクト開発において大切なことは、機能をリリースするのではなく、その先の顧客の根底にある問題を解決することです。そのために、製品発見を実施して顧客課題を解決できることを立証していくことが大切です。
継続的な製品発見と市場投入を行うためのチーム構成や役割は何か?
プロダクト開発チームとは
プロダクト開発チームは、職能横断型のチームで企業にとって困難な問題を解決するために存在します。
チームには明確な目標が与えられており、達成する能力をもっています。そして、目標にあった最も良い方法を考えだし実行する権限が与えられ、説明責任をもっています。
プロダクト開発チームは、仕事のすべてに責任をもちます。具体的には、チームのスコープ内のすべてのプロジェクト、機能、バグ対応、性能、最適化、コンテンツの変更など、製品に関わるありとあらゆることに責任をもちます。
プロダクト開発チームの構成
典型的なプロダクト開発チームは、1人のプロダクトマネージャー、1人のプロダクトデザイナー、そして2人〜12人ぐらいののエンジニアで構成されます。
他にも、必要に応じて、プロダクトマーケティングマネージャーや、テスト自動化エンジニア、ユーザーリサーチャー、データアナリスト、デリバリーマネージャーなども含まれたり、もしくは協業します。
プロダクト開発チームにおいて重要なのことは、チームの規模よりも、顧客の問題発見や問題解決に対して適正なものを作れるだけの必要なスキルのバランスを確保することです。
また、プロダクト規模が大きくなるとチームを分けて、チームごとの仕事の範囲を決める必要があります。チームの分け方はいろいろな切り方がありますが、ユーザーの種類ごとに分けたり、アプリやWebなどのデバイスごとに分けたり、ワークフローやカスタマージャーニーによってわけたりなど様々です。
プロダクト開発チームの各職種ごとの役割
プロダクトマネージャー目線でのプロダクト開発チームの各職種ごとの役割は次のとおりです。
- プロダクトマネージャー:可能性を評価し、何を作って顧客に届けるかを判断する。そのために、顧客、データ、自分たちのビジネス、業界や市場について深い知識をもつことが必要。
- プロダクトデザイナー:製品の発見、ユーザー体験の設計、プロトタイプ作り、ユーザーテスト、インタラクションデザイン、ビジュアルデザインを実施。
- エンジニア:機能の実現、可用性・性能・セキュリティなどの非機能の実現を実施。
- プロダクトマーケティングマネージャー:市場の代弁者、ポジショニング、メッセージング、市場参入プランを教えてくれる。
- ユーザーリサーチャー:適切な種類のユーザーを見つけ、適切なテストを作り、個々のユーザーや顧客とのコミュニケーションから最大限のことを学ぶ手助けをしてくれる。
- データアナリスト:適切な分析データを集めるのをサポートし、データを分析し、ライブデータテストの計画を立て、その結果を解釈し説明してくれる。
- テスト自動化エンジニア:プロダクトのテストを自動化するためのプログラムを書く。品質保証担当者の大部分に取って代わったらしい。
プロダクトを成功に導くためのプロダクトビジョン、戦略、目標は?
プロダクトビジョン、戦略、目標
プロダクトビジョンとプロダクト戦略は、組織が全体として成し遂げようとするビジョンと、そのビジョンを実現するためのプランが明らかにします。そして、それぞれのプロダクト開発チームは集中する分野を持っており、すべてのチームは一体となって製品のビジョンを実現していきます。
目標によって、個々のプロダクト開発チームが優先すべきビジネスの目標が明らかになる。
製品発見をするための具体的なテクニックはどういうものがあるか?
製品発見の目標
製品発見の目標は、できる限り迅速に、コストをかけずにアイデアの妥当性を立証することです。
製品発見において、何よりも重要なのはスピードで、スピードがあれば、多くのアイデアを試すことができ、見込みのあるアイデアを見つけるために多様なアプローチを実施できます。
製品発見テクニックをマスターした開発チームでは、大体1週間に10~20イテレーションという数の製品発見のテストができます。これらにより、市場投入に比べ製品発見では、時間と労力が少なくとも1桁は少なくてすみます。
代表的な製品発見のテクニック
製品発見のテクニックには状況ごとにいろいろなものがあります。代表的な製品発見のテクニックには次のようなものがあります。
- フレーミングテクニック:市場機会評価(4つの鍵となる質問に答える)、カスタマーレター(仮想のカスタマーレターをつくる)、スタートアップキャンパス(アーリーステージのスタートアップ向け)
- プランニングテクニック:ユーザーストーリーマップ(ユーザーストーリーにコンテキストを与える)、顧客発見プログラム(リファレンスカスタマー発見し開発し続ける)
- アイディエーションテクニック:顧客インタビュー(アイデア発見やアイデアの定性テスト)、コンシェルジュテスト(手作業で実施して価値を検証する)
- プロトタイプテクニック:ユーザープロトタイプ(使い方がわかるか検証する)、実現可能性プロトタイプ(実現ができるか検証する)
製品発見を小さく始めてみよう
私達は油断すると顧客の問題ではなく、解決策を話しがちです。しかし、プロダクト提供を通して顧客の問題を解決し、事業としても成立させることがプロダクト開発において最も重要です。
そのために、解決すべき問題をみつけ、適切な方法で解決するといった製品開発はとても重要なプロセスです。
ぜひ、本書を参考にしなが製品開発を小さく初めてみてください。